湿板写真をスキャンして遊ぼう会レポ

9/12に開催された株式会社サビアさんとあかつき写房のコラボレーション企画のレポートです。

午前中、サビアさんのお庭から撮影した琵琶湖

湿板写真のことが気になってらしたサビアの社長さんが、あかつき写房のFBに直接メッセージをくださったのがきっかけでした。メッセージのやり取りをして、とにかくお伺いしますと向かった先は比叡平。比叡平は行ったことあるけど、どんな事務所かと思って行ったらびっくりなロケーション!!広いし、景色はいいし、涼しいし(冬はめっちゃ寒いらしい)建物は綺麗でおしゃれだし、ほんまに最高。ここでなんかやろう!ということで今回の企画が決まりました。

お天気に恵まれました。

イベント内容


まず、比叡平のロケーションを活かし、あかつき写房が湿板写真の撮影&仕上げをします。それをサビアさんが超高精細スキャンするというマニアックなもの。デジカメの画素数がナンボだの何だのと騒いでいたのはいたのは昔の話。一定の画素数をクリアしてれば、特に画素数や精細度について話題になることは少なくなっていました(?)。実際、私たちも湿板写真の画質なんて気にしたこともなかった、、さて、湿板写真の情報量はいかに?

準備

湿板写真は暗室から離れて撮影することはできません。という訳でサビアさんの、おしゃれ事務所の二階に暗室を作りました。

サビアさんの二階に暗室出現。
仕上げをするスペース

暗室の中では、ガラスフィルムを作成する作業と、撮影したガラスを現像する作業を行います。ぜひ見てもらいたいプロセスなので、暗室内にカメラをセットして、テントの外にライブ中継をしました。

暗室の中にモニタリング用のカメラをセッティング

湿板写真は撮影した後、水洗&ニスがけに1時間以上かかります。スキャンするところまで通しで見てもらうと約3時間かかってしまいます。せっかく来たのにそんなに長く居れない人のために、午前中にテストを兼ねて一枚湿板写真を撮影して仕上げておこうということにしました。せっかくなので、デジカメでも撮影。データを比較します。

EOS 5Dsr に TS-E50mm
湿板写真とガチンコ勝負?

イベントスタート

チラホラと人が集まり、サビア奥村社長の挨拶からゆるりとイベントがスタート。あかつきの店長は喋りが得意ではないので、湿板写真の説明を手短に済ませて湿板写真の実演に。

高精細スキャンについて語る奥村社長

暗室では、ガラス板にコロジオン塗布 → 硝酸銀につけてハロゲン化 → カメラフォルダにセット までの作業を行います。この後、ガラス板が湿っているうちに撮影&現像までの作業をしないといけません!!「湿った」と書いて湿板写真と言いますが、まさに名前の由来はここからきています。

暗室内をライブ中継

撮影&現像

秋晴れの、気持ち良い風が吹く中での撮影。湿板写真の感度はだいたいISO1〜1.5くらいです。精細度を見たいので f32 まで絞って、シャッタースピードは5秒。並んで集合写真を撮りました。シャッターを切ったらダッシュで暗室に戻って現像!のはずが、マシントラブルで時間をロス。現像はライブ中継で見てもらいましたが、写真が無いです、、、ガラスをセットしてから約9分でしたが、画像の周辺が少し乾き始めていました。

並んで集合写真。シャッタースピードは5秒。
マシントラブル発生。遮板が戻らなくなった。カメラごと暗室に持っていくことに、、

スキャンニング

ここからはサビアさんの出番です。文化財や絵画などのデジタルアーカイブをするための世界最高峰のスキャナが並びます。湿板写真をスキャンするスキャナは、乾板写真(湿板写真の後に世に出回ったガラスネガ)のスキャン専用のもので超高精細でスキャンができます。0.1ミリ単位以下の調整をして、5000dpiという想像のつかないサイズでスキャンをします。

スキャンします!

さっそくモニターで確認します

拡大していくと、原版をいくら肉眼で見ても見えないものが見えてきます。顕微鏡で見ているような感覚で、最終的には銀の粒子?と思われるところまで見えてきます。湿板写真の情報量おそるべし。

上がスキャンデータ。下に写っているガラスの真ん中あたりの街並みのクローズアップ。

デジカメとの比較

気になる、デジカメとの比較です。結論から言うとEOS頑張ってます。湿板写真のスキャンサイズがEOSのフルサイズよりはるかに大きいので、これ以上拡大するとEOSのデータはドットになってしまいますが、あの小さなセンサーにすごい情報量が入っています。湿板写真はシャッタースピードが遅い上に、手でシャッターを切っているので、少しブレていました。これは、カメラマン泣かせですが、ちょっとしたカメラの操作ミス、ティルトやシフト、ピントのズレがすべてバレてしまいます、、

上が湿板スキャンデータ、下がEOSのフルサイズデータ

そろそろまとめ

周りを見渡すと、あらゆるものがデジタル化されていっています。それは、モニタなどの平面上だけでなく、3Dプリンターを使い、立体物までもがデジタルへと代わりつつあります。一度、デジタル化されたものを高精細スキャンしても、作った時の精細度を超える発見は期待しにくいです。その先にあるのは、その物体を構成するマテリアルにまで分解されたアナログ世界。物質的なダメージや腐食や侵食などです。湿板写真はレンズで集めた光を、ただ銀の粒子の濃淡(配列?)に置き換えたものという意味で究極のアナログ写真です。サビアさんに声をかかけてもらった時に、なぜ湿板写真にそんなに興味を持っておられるのかわかりませんでした。いまイベントを終えて、よく考えてみると、高精細スキャンに耐えうるアナログのもので、しかもデジタルスキャンして喜ばれるものってあまり無いのです(たぶん)。サビアさんからしたら、それに該当する獲物を発見した!感じでしょうか。私たちからしたら、ハンティングされた(笑)。そのおかげで気づいていなかった湿板写真の一面を知ることができました。私たちが「湿板写真を150年後にも残したい」と活動をしていく中で、デジタルの必要性を知り一歩前進できました。デジタルとアナログのどちらもが発展していきますよう願いを込めまして、まとめとさせてもらいます。さて、今日撮影した湿板写真のガラスとスキャンしたデータ、150年後に残っているのはどちらでしょうか?
長文お付き合いありがとうございました。

皆さんありがとうございました。

おまけ

集合写真の右から4番目の女性に持ってもらいました。この文字、肉眼ではどう頑張っても読めませんでした。