次の150年へ届ける一枚

プロジェクト

2019/12/08

-だいぶ前に書いたブログの続きです-

以前に「湿板写真を次の150年に届けるプロジェクト」と題してブログを書きました。ちょっと時間が経ってしまいましたが、今回はその続きです。前回の記事から半年、この期間の活動報告を含む もう少し具体的な内容を示していきたいと思います。軌道修正をしながら、少しづつ前進していきます。

2019.10  恵文社での展示。湿板写真を知ってもらうための3日間。

-さっそく軌道修正-

前回の記事でブログタイトルを「湿板写真を次の150年に届けるプロジェクト」 としておりましたが湿板写真に限らず、より多くの人に関わってもらいやすいと考えましたのでタイトルを「次の150年へ届ける一枚」プロジェクトにしようと思います。やっていく中で、また変更する可能性もありますが、ひとまずこれに決めました。切り口を変えながら写真の未来を考える機会や場ができることを願いまして。

-いろんな切り口-

古典技法、デジタル、フィルム、アート、写真祭、写真アワード、写真史、写真学、記念写真、商業写真、写真美術館、写真ギャラリー、写真の展示、キュレーション、未来の写真技術、写真の道具、などなどを扱う方々に関わって欲しいと考えています。全てのコンテンツをサポートしていなくてもいいし、得意なことや興味のあることを持ち寄って、全体の推進力になればいいと思っています。ハミ出しOK


-次の150年へ届けるために-

本題です。私たちの得意なところというか、このプロジェクトを始めるきっかけになった湿板写真に話題を戻します。まずは、湿板写真を中心にこのプロジェクトを組み立ててみます。150年後に届けるための具体案。まだ、うまく整理できているとは言えませんが、5項目に分けてみました。

1.知ってもらうこと
2.体験してもらうこと
3.買ってもらうこと
4.やってもらうこと
5.現代の湿板写真をつくること

以下に詳しく書いていきます。

1.知ってもらうこと

「湿板写真」と言っても、知ってる人が本当に少ないです。読み方は「しっぱんしゃしん」または「しつばんしゃしん」そこから始まります。

認知度アップのための第一弾のプロジェクトが100箱プロジェクトです。小さな木箱に入った湿板写真を100人分集めて展示しようというものです。全国各地で長期間かけて開催していく予定です。

100箱プロジェクト

2.体験してもらうこと

湿板写真の魅力は、物質としての存在そのもの撮影時の体験 です。なんせ触ったり見てもらったりする場所と機会を作ること。近所のカフェに置いてもらったり、イベントを開いたり、マルシェなどに参加したりしています。

2019.9 株式会社サビアさんとのコラボ企画。
湿板写真撮影&超高精細スキャンをするイベント。
サビアさん比叡平アトリエにて。
2019.10 恵文社で撮影デモンストレーション

3.買ってもらうこと

続けていくための資金調達という意味でも買ってもらうことは必要ですが、買ってもらうことで、より大切にしてもらうことで次の世代に届けやすくなると考えています。
ものを買わない時代に、”未来に残したいもの”としてあえて買うものとして選んでもらえるようになれば、それはとても嬉しいことです。

4.やってもらうこと

やってもらうというのは始めてもらうということです。当然ですが、今現在、湿板写真をやっている人たちが辞めてしまっては、150年後に残すどころか10年後もありません。実際、ここ2年ほどで、5人以上の先輩が湿板写真から撤退されました。私たちも頑張らなければならいのですが、私たちの他にも湿板写真を始めようとしている方が増えるといいなと思います。正直、個人で始めるのはちょっと大変なこともあるけれど、まずはどんなものか見てみたい人たちのために、私たちは機会を作ります。ワークショップや撮影会などでぜひ体験しにきてください。そして、本格的にやりたい人は、私たちの先生である田村写真の門を叩くことをお勧めします。

撮影デモンストレーションの様子

5.現代の湿板写真をつくること

私たちの使用しているカメラやレンズは、専門のお店で買ったり、オークションで買ったり、近所のおじさんにもらったりしたものです。カメラは全てノーブランドの乾板カメラ。カメラはだいたい60年から90年くらい前のもの、レンズは19世紀のものがあります。
レンズは大事にメンテしていけば当分使えそう。さて、カメラはあと何年使えるかな?と考えると、、うーん、できればずっと使いたいけど、すでにガタがきてるし、ものによっては10年、20年??ハードユースに30年耐えるとは思えません。技術を残しても、カメラが使用不可能では後世には残せないのです。
そもそも私たちが使用しているカメラも湿板写真専用ではなく、乾板写真用のカメラを改造して使っていますし、暗室用品である、硝酸銀ケースやディッパーも全て手作りです。教えてくれる人がいて、そして、その気にならないとできません。この湿板写真のスタートアップのハードルを一定に保つ、もしくは、下げる役割を私たちや、私たちの次の世代やさらにその次の世代の人たちがやっていかないと、とても150年後に残すことはできないのです。そのために、その時代時代での湿板写真をつくっていく必要があります。現代ならば、デジタルファブリケーション技術を使い道具をつくることで、湿板写真が私たちの手元にあることは間違いありません。

レーザーカッターで作った硝酸銀ケース(画面中央)と定着用ケーススタンド(画面左端)。道具を残すことも重要なこと。

また、表現においても、デジタルとの融合は欠かせません。例えば、湿板写真を超高精細スキャンしてみたり、製作過程でデジタルネガを使ったりするのも現代ならではの試みです。やってみると、予想以上の発見があるものです。

デジタルデータから湿板写真にする試み(寫眞ノカケラ)

-150年先を想像する-

150年後に届ける と言っているプロジェクトですが、実はこの150という数字にはめちゃくちゃこだわってはいません。「湿板写真が日本に広まって150年ほどだから」という結構安易な数字です。実は孫の代より先というニュアンスが出ればOKです。「次の150年に届ける一枚」を言い換えてみると「孫の代より先まで残したいものをみんなで考えよう」とか「孫の代より先まで残っても恥ずかしくない世の中にしよう」みたいな感じです。
150年前に撮影された写真を見てハッとするように、きっと、150年後の人たちも令和の写真を見た時に、何かしら思うことがあるはず。だったらその一枚が恥ずかしい一枚にならないように生きていこう!と思い、現代を生きる人とご一緒できると幸いです。